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Es VOL.9 [Symphonic Concert 2010 〜All Lovers〜]LIVE REPORT

music freak magazine & Es Flash Back GARNET CROW Final MemoriesP.020

●○○From music freak Es Vol.9

[GARNET CROW Symphonic Concert 2010 〜All Lovers〜] 東京国際フォーラム ホールA 2010.8.26

8月26日、東京国際フォーラムホールAにて、GARNET CROWと東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団が共演する[GARNET CROW Symphonic Concert 2010 〜All Lovers〜]が開催された。2層構造を持つ劇場形式となっている広々とした会場に入ると、まず目に飛び込んできたのは70人を越えるフル・オーケストラの演奏席が用意されたステージ。ハープやティンパニーやチューバ等、通常のロック・コンサートではあまり目にする事のない楽器も設置され、まさにそのさまはクラシック・コンサートそのもの。客席には「アヴェマリア」等有名なクラシックの曲が流れ、早めに着席したオーディエンスはその厳かな雰囲気にゆったりと身を委ねている様だった。今回のコンサートはデビュー10周年を迎えたGARNET CROWが、何か記念に残る事を……という主旨で企画された特別なステージ。これまでにも世界遺産の仁和寺でライヴを行う等積極的に新しい事に挑んできた彼等が、今夜また新たなチャレンジをするという事で、5,012を有する客席は、開演時刻の19時になる頃には満席に埋め尽くされていた。
19時05分。管弦楽団の面々が楽器を各々抱えてフォーマルなブラックの衣装で次々にステージに登場。速やかに着席後チューニングを始めた。チューニングとは合奏前に楽器の音合わせをする事。ロックのライヴではあまり目にしない光景だ。そして今回のコンサートのアレンジを手掛けた音楽監督であり指揮者でもある藤原いくろうが登場すると会場からひと際大きな拍手が。藤原は深々と一礼し指揮台へ。いよいよスペシャルな一夜の始まりだ。

1曲目はオーケストラのみによる「忘れ咲き」。イントロ部分では、ステージ上に設置されたスクリーンに、GARNET CROW10周年の記念ロゴから今回のコンサート・ロゴへ、続いてメンバーの写真が映し出されていく。ノスタルジックな旋律を奏でるストリングスの音色、高揚感を煽る管楽器や打楽器、オーケストラ向きの原曲のポテンシャルが最大限に引き出された美しく雄大な演奏が会場を一気にのみ込む。"この迫力ある演奏を受けて、これからステージに上がるメンバー4人は一体どんな想いを胸にスタンバイしているのだろう?"……そんな事を考えていると曲の途中でAZUKI 七(Key.)、岡本仁志(G.)、古井弘人(Key.)がモノトーンにまとめたシックな出立ちでステージに現れた。そして最後にゆっくりとヴォーカル中村由利が登場。目の覚める様な深紅のロング・ドレスを身に纏い、ステージ中央に進む。
ステージ前方にメンバー4人のスタンバイが完了すると2曲目は「涙のイエスタデー」。藤原の情熱的なタクトに合わせて、オーケストラの華麗な伴奏と、全く気負いを感じない伸び伸びとした中村のヴォーカルが溶け合ってゆく。原曲ではエレキ・ギターのキャッチーなソロが聴ける間奏部分では、ビゼー作曲のオペラ「カルメン」の一節「ハバネラ」のフレーズをオーケストラで奏でるという洒落たアレンジが飛び出す等、このライヴならではの魅力で楽しませてくれた。続く「The first cry」では真っ赤なライトの中、AZUKI 七の切な気なピアノに寄り添う様に響くフルートとミュート・トランペットの音色、そこに弦が織り重なってイントロから一気に幻想的な世界へ。原曲では間奏やエンディングでのエモーショナルなサックスが非常に印象的なナンバーだが、今宵はトランペットと弦がその役目を果たしドラマティックに、歌詞が放つ無常な世界観をより深く描き出していた。またサビでは古井がチューブラ・ベルの音色を奏でている。通常の彼等では使用しない音色が出て来るあたり、やはり今夜の "特別感" が伝わってくる。

そして3曲目が終わった所で1st MC。"皆さんSymphonic Concertへようこそ。GARNET CROWです" そう挨拶すると共演者の藤原と管弦楽団を紹介。再び会場は大きな拍手で包まれた。"今日はスペシャルな、そして思い出に残るライヴにしたいと思っておりますので、皆さん宜しくお願いします" と笑顔で一礼すると4曲目の「Love is a Bird」へ。岡本はアコースティック・ギターに持ち替えて、原曲よりも少しテンポが遅めでゆったりとした印象のアレンジに変わっていたのだが、オーケストラの音の壁と拮抗する中村の表現力豊かなヴォーカルは貫禄十分。

さてここで余談だが、終演後藤原のブログを覗いてみた。7月末、オーケストレーション作業も最後の追い込みに入ったという日記に、"今回のGARNET CROWのオーケストレーションのキーワードは[虹色パレット]" と綴っている。そして本番の翌日には "GARNET CROWの音楽って箱に入った絵の具のセットみたいだな、、、彼らの絵の具のチューブをひっぱりだして、藤原の頭の中のパレットで混ぜて、、、絵を描くような楽しい作業でした" と感想を述べていた。その[虹色パレット]という言葉にぴったりだったのが続く5曲目の「今宵エデンの片隅で」。8ビートのタイトなリズム隊が印象的な原曲から一転、耽美なストリングスのカンタービレに、煌めきを与えるホーンセクション、さらに躍動感や壮快感をプラスするタンバリンを始めとした打楽器群と、まさにパレットの上で様々な色が混ざり合い、聴く人の心をカラフルな色に染め上げていく、そんな明るくて楽しい1曲に仕上がっていた。続く「水のない晴れた海へ」も期待通りの出来映え。感傷的なバイオリンの調べに、この楽曲の肝とも言えるAZUKI 七のピアノのフレーズが絶妙だ。古井の随所に出て来るオルガンのフレーズは、実は普段はシーケンサーによる機械的なフレーズなのだが、今夜は70年代プログレッシブ・ロックのリック・ウェイクマンさながらの演奏を披露してくれている。それがオーケストラと絶妙に溶け合っているのだ。そして間奏もとても良かった。通常のライヴでは情熱的なピアノ・ソロが入りそこが大きな聴き所の1つになっているのだが、今回は岡本の哀愁漂うギター・ソロになっていて、見事オーディエンスをより深海へといざなってくれた。

7曲目の「夢みたあとで」ではAZUKI 七、岡本、古井は一時退場。同時に指揮者の藤原がピアノ席へ。中村由利のソロと藤原のピアノと管弦楽団のコラボレーション・ヴァージョンを披露してくれた。彼等にとってもっとも大切としているこの名曲をこれまでもう何度もライヴで聴いてきたけれど、その度演奏から放たれる音や歌詞がじんわりと自分の中に染み渡っていく……そんな感動を味わっていた。しかし今回のシンフォニック・ヴァージョンでは、内に入ってきてじっくり聴き込むというよりも、むしろどんどん音が広がっていく様な、壮大で力強さを感じる、そんな新たな感動を覚えた。

さて今回のコンサートは大きく3つに分かれていた。続く8曲目から10曲目までは、オーケストラ小編成とMINIQLO(ミニクロ)によるコラボ・コーナーに。MINIQLOとは中村と岡本の2人で編成されたGARNET CROWのミニチュア版。2月〜3月に行われた10年を祝うベスト・ライヴでは会場限定で1stシングルが発売される等、今やもうファンの間ではお馴染みのスタイルだ。
8曲目の「もう一度 笑って」、9曲目の「Holy ground」、10曲目の「花は咲いて ただ揺れて」は、いずれも美しいストリングス・アレンジをメインに、岡本のアコースティック・ギターと藤原のピアノが溶け合い、そこに表現力豊かな中村のヴォーカルが凛と咲いていた。特にクラシックの名曲「ツィゴイネルワイゼン」を想起させる「花は咲いて ただ揺れて」は存在感を放っていて心に残っている。

小編成コーナーが終わると15分の休憩タイム。クラシックのコンサートでは通常この様に途中15分程の休憩が挟まれ、観客はドリンク・タイムや歓談タイムを楽しむのだ。

休憩後はメンバー4人に2人のサポート、ドラムの車谷啓介、ベースの麻井寛史を加えバンド・スタイルでのコーナーへ。まずはこのライヴへ向けて8月4日にリリースされたコンセプト・アルバム『All Lovers』にニュー・アレンジで収録された「やさしい雨 〜相思相愛ver.〜」、「恋することしか出来ないみたいに 〜恋の蕾ver.〜」を披露。1部の荘厳なSymphonicコーナーとはがらりと世界観を変え、シンプルなバンド編成にもかかわらず非常に骨太な演奏を聴かせてくれる。"今日もよく晴れましたので、きっとこんな綺麗な星空が見えるんじゃないかなと思って続いての曲をお送りしたいと思います" とのMCを添えられた「Love Lone Star」では、久し振りにライヴで披露されるとあって沸き立つ客席。その後のMCではメンバーのこの夏の思い出トークを繰り広げ、14曲目の「WEEKEND」へ。こちらも『All Lovers』に収録されたファンの間で人気の隠れた名曲だ。ライヴで聴くと、よりこの曲の持つ切なさと優しさのコントラストが胸を打つ。そしてバンド・スタイル最後は最新シングル「Over Drive」。スタンディングに手拍子、サビではリズムに合わせて会場が一斉に手を左右に振りながら演奏と同化。一気に会場が熱気を帯びた所で、再び藤原とオーケストラの面々がステージに登場。本編ラストはライヴ初披露曲、『All Lovers』に収録された新曲「空に花火」が用意された。古井弘人がまとめあげたドラム、ベースも加わったロックスピリット溢れるバンド演奏と、藤原いくろうがGARNET CROWの世界観に寄り添う形で加えられたクラシックの優雅さがもたらすスケール感溢れるシンフォニック・ロック・サウンドは、この日1番の感動を与えてくれた。

晴れやかな笑顔を讃え指揮者の藤原と固い握手を交わしてメンバーが退場すると、すぐさまアンコールを求める手拍子が響き渡る。しばらくすると白いグッズTシャツを着て再び4人が登場。アンコール1曲目は恋する気持ちを歌ったハッピー・ソング「Mr. Holiday」。リズミカルでポップなナンバーが、AZUKI 七の流麗なピアノ・ソロから始まり、金管系のオーケストレーションが見事にバンド・サウンドと融合したアレンジに生まれ変わって披露された。最後のMCではメンバーそれぞれ初の試みとなったシンフォニック・コンサートの感想を述べ、新たな経験に興奮している様子をうかがわせた。そしていよいよ今宵のラスト・ナンバー。"皆さんと楽しく歌って終わりたいなと思って選びました" と紹介されたのは「二人のロケット」だ。キャッチーな楽曲にメンバーとオーケストラの盛大な演奏が融合しGARNET CROWの音楽的領域を押し広げていた。ステージが一体となっていて非常に楽しげだ。また情熱的に振られる藤原のタクトも、この曲ではまるでダンスを踊っているかの様に柔らかくなめらかなのが印象的だった。
"初の試みが実現出来、無事成功した事を嬉しく思っています" と、堂々と中村自らがコメントした様に、デビュー10周年を記念したスペシャル・コンサートは見事成功。充実した時間と感動を与え幕を閉じた。そして何より、フル・オーケストラを従えての堂々たる4人のパフォーマンスを目の当たりにし、10年のキャリアにより積み重ねられた彼らの成長とバンドの成熟ぶりを実感した一夜だった。この経験が次にどういかされるのか、今後が非常に楽しみだ。

(TEXT BY KAREN HAYAMA)