Es VOL.39 10th Album『Terminus』Liner Notes(前半)
music freak magazine & Es Flash Back GARNET CROW Final MemoriesP.084
●○ From music freak Es Vol.39
GARNET CROW
10th Album 『Terminus』 Liner Notes
文/斉田 才
一聴して“これはヤバい!”と思った。傑作だ。それも最高傑作かもしれない。そう思い出すと不安がよぎった。だって最高傑作がそう簡単に出来るわけないじゃないか。アーティストが全身全霊を込め、身を削って作り上げなければ完成しせぬ至高の作品、それこそが最高傑作と呼ぶに相応しい。
ところが、今作にはその雰囲気があるのだ。何かを秘めたような忽然とした強さ、聴けば聴くほどに魅きこまれる魔力のような存在感……、例えていうなれば、THE BEATLESの『ABBEY ROAD』のような、サザンオールスターズの『キラーストリート』のような(おいおい、それじゃ終わっちまうじゃないか!)それほどの気迫と芸術性とを感じる出来映えの作品、それが『Terminus』(テルミナス)だ。
GARNET CROWにとって10枚目となるオリジナル・フルアルバム『Terminus』。タイトルから想起されるのはヨーロッパの駅の風景。そこは終着駅でもあるが、始発駅でもある。様々なドラマが交錯し旅立っていく場所、過去と現在と未来を繋ぐ記憶の拠点でもある。
その“駅”から発着する収録曲は全10曲。10枚目のオリジナルにして10曲とは潔く、また暗示的な曲数である。また、懐古主義的なアルバム世代にはA面B面が存在したレコード盤の記憶を彷彿させ、それだけでノスタルジーさえ蘇ってくる。
まず、驚かされるのは収録曲中すでに既発のシングルとしてリリースされた楽曲は「Nostalgia」ただ1曲のみ。あとはこのアルバム初出の新曲ばかり(書き下ろし曲か?)が収められている。いかに今作がアルバムとしてのトータル・クオリティにこだわったかが窺える。そして、まさに今作はそういった根拠を裏付けるかのように非常に芸術性の高い作品に仕上がっている。
アルバムは、ドラマティックな「Nostalgia」で幕を開け、静かなる憂いの「trade」、気高き「Maizy」、落ち着きの中に情熱を秘めた「白い空」、彼らの最初期を想わせる「Life goes on!」へと続き、一転ラテンの情熱に溢れた「P.S GIRL」から、これぞGARNET CROWの耽美なアート性を発揮した傑作「海をゆく獅子」、そしてメランコリックな「鏡にみた夢」、侘び寂びを感じさせる「The Someone's Tale」、そして最後の静かなる平穏ともいえる「closer」で終幕する。一気に最後まで聴いてしまう、聴かせられてしまう、彼らの音楽的世界観が凝縮された内容となっている。
アルバム・ジャケットに目を転じてみよう。背景には、まさに劇場を想わせるガーネット色のビロードカーテンと羽が配され、センターには忽然とした表情の4人が夜会服を纏って凛とした佇まいを見せている。この格調高き様式もまたGARNET CROWならでは、この4人でなければならない宿命的な必然を映し出している。
ヴォーカル&作曲を行う中村由利、彼女のアルトからソプラノまでを歌いきる官能的なヴォーカル力と崇高なるメロディ、そして作詞を担当する AZUKI 七は、更に哲学的かつ芸術性溢フレーズで中村の楽曲の世界観を描き切り、アレンジの古井弘人はデジタルとアナログの境界線を行き来しながら、更に今作では自身のAOR的世界観をも導入し、成熟したサウンドを構築している。そして控えめにしておきながら絶対的な存在感を響かせる岡本仁志のギター・サウンドが、モノクロームな楽曲の陰影のさなかに彩りを添えていくこのコンビネーション! このアルバムを聴き終えてみれば、いかにGARNET CROWがアート性の高い職人集団なのか、この4人ならではのオリジナルなグループなのかを、感動的な余韻と共に改めて感じさせられるだろう。全ての音楽ファンに捧げたい彼らの金字塔、じっくりと聴き込んでみて欲しい。
■『Terminus』楽曲解説
01.Nostalgia
2012年9月26日にリリースされた34枚目のシングル曲。最近の傾向として大胆なデジタル・サウンドも導入するようになってきた GARNET CROWだが、そんな新しいスタイルを感じさせる古井のシンセ・イントロに導かれながら凛とした響きを持った中村のヴォーカルで幕を開けるこのナンバー。いきなりクライマックスから舞台が始まるような華やかな印象を与えている。この力強き宣言曲は“これだよ、コレ!”と往年のファンも新しきクラウドも納得し、歓喜の声を上げるだろう。
このメロディにしてこの歌声、アンビバレントな歌詞、きらびやかなサウンド、郷愁では終わらせないGARNET CROWの現在と健在を伝える美麗ナンバーだ。
02.trade
2曲目は打って変わって浮遊感あるシンセの牧歌的イントロから、岡本の刻むギター・カッティングの色合いも心地良く響かせてGARNET流リズミカルなナンバーへ。こういうマイナー調のメロディの何とも言えぬ寂寥感もこのグルーブが作り上げているイメージそのものだ。一見突き放した愛情の裏側に悲しみを引き受ける愛が垣間見えるAZUKI 七の歌詞は、何度も読み返してその深みに到達したい。古井アレンジの緻密さも秀逸で、特に曲後半のブラスやストリングスのゴージャス感にも注目したい。